ゴルフというスポーツにおいて、グリーン周りのアプローチはスコアをまとめるための大切な命線です。しかし、多くのプレーヤーがウェッジの「ヘッド」選びには時間をかける一方で、その性能を左右する「シャフト」選びを後回しにしてしまう傾向があります。
特に「ウェッジのシャフトはアイアンより重くすべき」という古い決まり文句を信じて、自分に合わないスペックを選び、ミスを連発しているケースは少なくありません。
この記事では、ウェッジでスピンがかかる仕組みから、アイアンとの重さのバランスの正解、そして各シャフトの忖度ない評価までを分かりやすく解説し、あなたのスコアアップをお手伝いいたします。
ロフトについては以下で詳細な解説を行っております。

プロのアプローチはなぜ止まるのでしょうか?魔法のスピンを生み出す物理の正体
テレビでプロゴルファーのアプローチを見ると、グリーンに落ちたボールがキュキュッと急停止しますよね。これは魔法ではなく、物理的な「摩擦(まさつ)」の力を最大限に利用しているからなのです。スピンの正体は、クラブの顔(フェース)とボールがぶつかった瞬間に生まれる強力な摩擦エネルギーです。
この摩擦が強ければ強いほど、ボールはたくさん回転し、グリーン上でピタッと止まりやすくなります。
プロがこの摩擦を大きくするために意識しているポイントは、主に以下の5つです。
- 角度(ロフト角)の活用: サンドウェッジのように、面が寝ているクラブを使うことで、ボールがフェースの上を滑る距離が長くなり、摩擦が起きやすくなります。
- きれいに当てること(クリーンヒット): フェースとボールの間に芝や砂、水分が挟まると、雨の日のタイヤのようにスリップしてスピンが抜けてしまいます。プロはボールだけを直接打つ技術がとても高いのです。
- 上から打ち込む軌道: クラブが一番低いところに来る前にボールを捕らえることで、フェースの溝がボールに深く食い込み、強いスピンが生まれます。
- フェースに乗せる感覚: インパクトの瞬間、ボールを弾くのではなく、フェースの上に長く乗せているようなイメージで打ちます。これにより、ボールと触れている時間が長くなり、摩擦が最大になります。
- 低いフォローを保つ: 打った後にヘッドを低く長く出すことで、物理的にボールとの接触時間を引き延ばしています。
これらの技術を支えているのが、実は「シャフト」の動きです。シャフトが自分のスイングに合っていないと、プロのように低い手元を保ったり、きれいにボールを打ったりすることは難しくなってしまいます。
ウェッジのシャフトはアイアンに合わせるべき?それとも重くすべき?
ウェッジのシャフトの重さを考えるとき、「アイアンと同じにする」か「アイアンより重くする」かで迷う方が多いでしょう。昔はウェッジを重くするのが普通でしたが、今のゴルフ理論では考え方が変わってきています。
今の主流は「アイアンと同じ重さ」にすることです
現在のクラブ選びの理論で最もおすすめされているのは、「ウェッジのシャフトをアイアンと同じ、あるいは同じくらいの重さに揃える」ことです。
これは、フルショットからアプローチまで、振る時の通り道(スイングプレーン)を一定にするためです。
アイアンとウェッジで重さが違いすぎると、振っている時の遠心力の感じ方や、タイミングが狂ってしまいます。
例えば、アイアンが軽いのにウェッジだけがとても重いと、振る時にヘッドが早く落ちてしまい、ボールの手前を叩いてしまう(ダフリ)原因になります。
100ヤードくらいのショットを正確に打ちたいなら、重さを揃えるのが一番迷いのない選択になります。
伝統的な「重め」の設定にも良いところがあります
一方で、アイアンよりも10g〜20gほど重いシャフトを選ぶスタイルも、特定の状況ではとても役に立ちます。
ウェッジは短い距離を細かく打ち分けたり、深い芝やバンカーから打ったりすることが多いクラブです。
このような「抵抗が強い場所」では、ある程度の重さがあることで、手先の余計な動きを抑え、ヘッドの重みを利用して芝や砂に負けずに振り抜くことができるようになります。
特に、アプローチで「打ち急ぎ」や「手首の使いすぎ」といったミスが出やすい方にとって、重めのシャフトはスイングのリズムをゆったりと安定させてくれる効果があります。
| 比較するポイント | アイアンと同じ重さ | アイアンより重い重さ |
| 主な使いみち | フルショット、ハーフショット | アプローチ、バンカー |
| 一番のメリット | 振り心地が同じで、距離が合う | 重みでゆっくり振れ、芝に負けない |
| 起きやすいミス | 軽いと手打ちになりやすい | 重いと地面を叩きすぎてしまう |
| おすすめの人 | 正確なショットを打ちたい人 | アプローチのリズムを安定させたい人 |
ウェッジのシャフトとアイアンのシャフトを合わせるべきな人
ウェッジのシャフトをアイアンのスペックと完全に合わせるべき人には、はっきりとした特徴があります。
まず、ウェッジで思い切り打つ(フルショットをする)ことが多い人です。
アイアンと同じ感覚で100ヤード前後を狙いたい場合、重さや硬さを変えてしまうとしなり方が変わってしまい、左右に曲がったり距離がバラバラになったりする原因になります。
次に、最新の軽いスチールシャフト(N.S.PRO 950GH neoなど)を使っている人です。
最近のアイアンはボールが高く上がりやすい設計になっていて、シャフトもそれに合わせて先が動くようになっています。ウェッジまでこの流れを合わせることで、「高く上げて止める」というイメージをすべての番手で統一しやすくなります。
実際に男子プロの約60%はアイアンと同じシャフトを使っており、上手な人ほど「全部のクラブで同じ振り心地」であることを大切にしています。
アイアンのシャフトよりも重くしたほうがいい人
アプローチをより安定させたいなら、あえてアイアンより10g〜20g重くするのも賢い選択です。
まず、アプローチでどうしても「体が止まって手だけで打ってしまう」癖がある人には、重めのシャフトがとても効果的です。
重いものは急に動かすのが難しいため、自然と体の大きな筋肉を使ったスイングになり、手元が浮きにくい低いインパクトが作りやすくなります 。
また、バンカー専用のウェッジ(主にサンドウェッジ)を持っている人にもおすすめです。バンカーショットは「砂を叩く」という力が必要な動作なので、砂の抵抗に負けない重さは大きな味方になります。
実は女子プロゴルファーの約75%が、アイアンよりも重いシャフトを選んでいます。これは、力があまりないプレーヤーこそ、クラブの重さを利用して安定させているという良い見本なのです。
最低限注意すべきことと「やってはいけない」組み合わせ
ウェッジのシャフトを選ぶとき、多くの人が陥りやすい罠があります。
これを知らないと、せっかく買ったウェッジがスコアを落とす原因になってしまいます。
「30g以上の差」は絶対にNGです
一番多い失敗は、アイアンが軽い(例えば95gくらい)のに、ウェッジだけプロが使うようなとても重いシャフト(130gくらい)を入れることです。
この差が30g以上になると、人間は振り心地の違いを我慢できなくなります 。
このような組み合わせにすると、ウェッジを持った瞬間に「重っ!」と感じてしまい、体に力が入ります。
その結果、距離感が全然合わなくなったり、ダフリが止まらなくなったりと、セッティングがボロボロになってしまいます。
重くする場合でも、差は10g〜20g以内にするのが黄金のルールです。
素材(カーボンとスチール)を混ぜるのは危険です
アイアンがカーボンシャフトで、ウェッジだけスチールシャフトを使っているケースをよく見かけますが、これはプロでも難しい組み合わせです。
スチールとカーボンでは、振った時の「しなり感」や、手に伝わる「打感」が全く違います。
カーボンに慣れている人がスチールを打つと、硬く感じてしまい、繊細なアプローチがしにくくなります。
もしアイアンがカーボンなら、ウェッジにも少し重めのカーボンシャフトを入れるのが正解です。
硬くしすぎないことが大切です
ウェッジのシャフトは、アイアンと同じか、あるいは「少し柔らかめ」にするのが基本です。
シャフトが硬すぎると、しなりを感じることができず、ボールがフェースに乗る感覚がなくなってしまいます。
硬いシャフトは思い切り打つときには曲がりにくいですが、アプローチのような細かい力加減が必要なときは、思ったよりボールが飛んでしまうミスに繋がりやすいのです。
ウェッジ専用シャフトの徹底分析と「悪い評価」の真実
ここからは、人気のウェッジ専用シャフトについて、良いところだけでなく、あえて「悪いところ」も忖度なくお伝えします。
ダイナミックゴールド (True Temper)

昔からの定番で、プロも多く使っている重いシャフトです。
- 良いところ: 手元側が重く、粘るようにしなるのでタイミングが取りやすいです。低いボールでギュギュッとスピンをかけたいパワーのある人には最高です。
- 悪いところ: とにかく重すぎるため、一般的な体力の人には振り切れません。また、重すぎてヘッドが地面に落ちやすく、ダフリの原因になりやすいのも欠点です。
以下よりリシャフトが可能ですので、チェックしてみてください。
N.S.PRO MODUS3 WEDGE (日本シャフト)

アイアンで大人気の「モーダス」シリーズのウェッジ専用版です。筆者はこのシャフトを使っています。
- 良いところ: 打つ瞬間の面の向き(ロフト)を安定させる設計なので、縦の距離感がとても合いやすいです。特に「115」という重さは、多くの人にとってちょうど良い名作です。
- 悪いところ: 105という軽いモデルは、人によっては先が動きすぎて「頼りない」と感じることがあります。また、独特なしなり方をするので、カチッとした硬い感触が好きな人には合いません。
以下よりリシャフトが可能ですので、チェックしてみてください。
KBS Hi-Rev 2.0 (KBS)

「誰でもスピンがかかる」と評判のシャフトです。
- 良いところ: 先端を柔らかくすることでヘッドを大きく動かし、スピン量を無理やり増やすことができます。スピンで驚かせたいならこれです。
- 悪いところ: 実は全体的にはかなり硬く、かなり力のある人向けの設計です。普通の人が使うとシャフトがしならず、ボールが右に飛んでしまいやすいという難しい一面があります。
以下よりリシャフトが可能ですので、チェックしてみてください。
N.S.PRO 950GH neo (日本シャフト)

最近の軽いスチールアイアンによく付いているシャフトです。
- 良いところ: 先がよくしなってボールを高く上げてくれるので、楽にボールを止められます。初心者の方にも優しい設計です。
- 悪いところ: ボールを「低く抑えて打つ」のは苦手です。また、スピンを増やす特別な機能はないので、激しいスピンを期待する人には物足りないでしょう。
以下よりリシャフトが可能ですので、チェックしてみてください。
| シャフト名 | 重さの目安 | 特徴 | 失敗しやすい人 |
| ダイナミックゴールド | 約129g | ずっしりと粘る | 軽いシャフトを使っている人 |
| MODUS3 WEDGE 115 | 約122g | 距離感が合いやすい | 硬い感触が好きな人 |
| KBS Hi-Rev 2.0 | 約125g〜 | 猛烈なスピン | 体力に自信がない人 |
| 950GH neo | 約98g | ボールが上がりやすい | 低く打ちたい人 |
スコアアップのための追加作戦:ロフトごとの使い分け
ウェッジを2本、3本と持っている場合、全部同じシャフトにするのがいいのでしょうか?
52度と58度で分ける考え方
用途に合わせて重さを変えるのは、とても賢い方法です。
- 50度・52度(アプローチウェッジ): 100ヤードくらいのフルショットで使うので、アイアンと同じ重さにするのが鉄則です。ここを重くしすぎると、アイアンとの飛距離の差が狂ってしまいます。
- 56度・58度(サンドウェッジ): 短いアプローチやバンカーがメインなので、アイアンより10gくらい重くするのもアリです。これでバンカーの砂にも負けなくなります。
ただし、同じウェッジをバンカーでもアプローチでも使うなら、重さをアイアンに揃えておくのが今の主流の考え方です。
「トルク」という魔法の遊びでミスを防ぐ
シャフト選びで忘れがちなのが「トルク(ねじれ)」です。
トルクは車のハンドルの「遊び」のようなものです。数値が大きいほど、手の余計な動きをクラブが無視してくれます。
アプローチは緊張して手が動きがちですが、トルクが小さい(遊びがない)シャフトは、その小さなミスをそのままボールに伝えてしまいます。アプローチが苦手な人ほど、トルクが少し大きめのシャフトを選ぶと、クラブがミスを助けてくれるようになります。
結論:あなたが買うべきシャフトはこれです!
最後に、あなたのプレースタイルに合わせた最終チェックをしましょう。
アイアンと同じシャフトを選ぶべき人
- 今のアイアンが調子よくて、その感覚を変えたくない人。
- 100ヤード前後のショットの正確さを一番大切にしたい人。
- おすすめアクション: アイアンと同じシャフトが付いたウェッジを買いましょう。
アイアンより少し重いシャフトを選ぶべき人
- アプローチでついつい早く振ってしまい、ミスをする人。
- バンカーを一発で出したい、深い芝から楽に打ちたい人。
- おすすめアクション: MODUS3 WEDGE 115や、アイアンより少しだけ重いシャフトを選びましょう。
絶対に避けてほしい組み合わせ
- アイアンとウェッジの重さが30g以上も違うセット。
- アイアンがカーボンなのに、ウェッジだけガチガチのスチール。
- アイアンよりも硬いフレックスのシャフト。
ウェッジのシャフトは、あなたのスコアを支える最後の砦(とりで)です。プロの真似をするのではなく、自分のアイアンとの「つながり」を大切にして選んでください。
そうすれば、次のラウンドでは驚くようなスピンショットが打てるようになりますよ!

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