TaylorMadeのスパイダー GTは、2022年に登場した最新世代のスパイダーシリーズ基本モデルです。
ツアープロからアマチュアまで支持を集めてきたスパイダーパターの伝統を受け継ぎつつ、オープンフレーム構造やPure Roll²インサートなど新技術を採用し、より高い安定性と順回転性能を実現しています。
本記事ではスパイダーGTの特徴を詳しく解説し、どんなゴルファーに向いているか、ネック形状ごとの性能差、他モデルや他社マレットパターとの比較、プロ・アマのレビュー評価、6項目の客観的評価、スペック・価格情報まで網羅します。
高MOIパター選びに迷うゴルファーの疑問を解消し、あなたに最適な一本を見つけるためのガイドとなれば幸いです。


TaylorMade スパイダー GTの特徴

メーカー | TaylorMade |
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シリーズ | Spider |
発売日 | 2022年3月4日 |
新品価格 | 46,200円 |
中古最安値 | 18,000円 |
中古最高値 | 35,000円 |
ヘッドの形状 | ネオマレットタイプ |
ヘッドの素材 | マルチマテリアル構造:軽量6061アルミニウム (トッププレート) + 高比重スチールサイドウェイト (左右各90gなど) + Pure Roll² インサート (アルミニウムビーム + TPUウレタン) |
ヘッドの重量 | 365g |
ネックの形状 | スモールスラント、シングルベンド、センターシャフト |
シャフトの素材 | TaylorMade FLUTED FEEL™ シャフト (スチール) |
ロフト角 | 3度 |
シャフトの長さ | 33インチ、34インチ |
※中古最安値、中古最高値は2025年5月時点
スパイダーGTは、従来モデルから形状・構造を刷新し、高慣性モーメント(MOI)による直進安定性と順回転性能を向上させた意欲作です。まずはその中核技術と設計上の特徴を見ていきましょう。


1. オープンフレーム構造による極限の安定性
2. Pure Roll²インサートによる順回転とフィーリング
3. フルーテッドフィールシャフトによる打感・安定性の向上
4. シャープなウィング形状とアライメント性能
1.オープンフレーム構造による極限の安定性
スパイダーGT最大の特徴は、ヘッド中央を大胆にくり抜いたオープンフレーム構造のマレット形状です。
従来のスパイダーが曲線的でボリュームのある形状だったのに対し、GTでは両側に翼を広げたシャープなウィングデザインを採用しています。ヘッド上面には145gの超軽量アルミニウム製トッププレートを配し、中央部の余分な重量を徹底的に排除。
その浮いた重量を活用して、ソール後方左右に各90gのスチール製サイドウェイトを配置し、ヘッド総重量の約82%もの質量を外周部に再配分しています。
この革新的なマルチマテリアル設計により、インパクト時の慣性モーメントが飛躍的に向上し、多少ヒットの芯を外してもヘッドがブレにくく直進性を維持します。
実際メーカーは「Spider GTはコンパクトマレット形状として過去最高のMOIを実現しており、Spider XやSpider Tourを上回る安定性を備える」と謳っています。
さらに高慣性モーメント化の恩恵として、距離のバラツキも軽減され、ショートパットだけでなくロングパットでも安定した転がりが得られます。
テーラーメイドのビル・プライス氏(パター開発責任者)も「Spider GTは重量をヘッドセンターから取り除くことで、あらゆる角度から安定性を高めることに成功した」と述べており、Spiderシリーズ史上“最も安定したスパイダー”に仕上がっていることが強調されています。
2.Pure Roll²インサートによる順回転とフィーリング

フェースには新開発のPure Roll²(ピュアロール・スクエア)インサートが搭載されています。
これはツアー実績のある従来のPure Rollインサートを進化させたもので、黒いTPU系樹脂のフェースに45度の角度で配列した銀色のアルミニウムバー(溝)を埋め込んだマルチ素材構造が特徴です。
インパクト時にボールへ素早くトップスピンを与え、打ち出し直後から順回転でスムーズにボールを転がす効果があります。従来モデルよりもアルミバーの角度を最適化することで順回転量を向上させ、オフセンターヒット時でも安定したスピンが得られるよう工夫されています。
また、このPure Roll²インサートはフィーリング面でも改良が加えられています。
素材のTPU樹脂自体をやや硬めに調整することで、近年主流のソフトなカバーのボールを打った際にもフェースの打感が緩みすぎないようチューニングされています。
実際に打ったゴルファーからは「前作Spider Xのインサートより打感がしっかり(やや硬め)していてボールの弾きが強い」という声が多く、初めは距離感が合わないと感じるケースもあります。
Golfalotのレビューでも「音や初期フィードバック自体はソフト寄りだが、実際の転がりは“熱い”(ボール初速が出やすい)インサートだ」と評されています。
しかしこれは裏を返せば転がりが力強い証拠でもあり、「慣れて正しい振り幅とタッチを身につければ、常にボールが地面に吸い付くような順回転でよく転がってくれる」と高く評価されています。
柔らかすぎて緩い打感よりも、適度に芯のある打感で転がりの良さを重視したいゴルファーには、このPure Roll²インサートは大きな武器になるでしょう。
3.フルーテッドフィールシャフトによる打感・安定性の向上
スパイダーGTには標準でテーラーメイド独自開発のFluted Feel(フルーテッドフィール)パターシャフトが装着されています。
このシャフトは先端から約5インチ(12.7cm)の位置に特殊なフルート加工(溝状の絞り)が施されており、これによってシャフトのしなり特性と振動吸収性を最適化しています。
従来スチールシャフトは剛性が高くインパクトの振動が直接手に伝わりがちでしたが、フルーテッドフィールシャフトではインパクト時のショックを和らげつつ打感を向上させ、さらにストローク中の安定性や方向性(打点ブレ時の許容度)も高める効果があります。
事実、このシャフトのおかげでスパイダーGTの打感について「インサートは硬めだが全体的なフィーリングは非常にマイルドで、心地よい手応え」という評価も見られます。
プロダクトとして細部まで完成度を高めるため、シャフトにも最新テクノロジーを投入している点は、スパイダーGTの見逃せない特徴です。
4.シャープなウィング形状とアライメント性能
Spider GTの外観上の特徴として、そのシャープで角ばったヘッドシェイプが挙げられます。
過去のSpiderシリーズが曲線的で丸みを帯びたフォルムだったのに対し、GTは直線的でエッジの効いたウィング(羽根)形状を採用しており、構えた時にスクエア感が強く方向を出しやすいという声があります。
実際、「スパイダーGTは見た目通り打感も安定しており、ヘッドをまっすぐ引きやすい」「構えたときの座りが良く、方向を出しやすい」といった評価がユーザーからも寄せられています。
ヘッド後方の両ウィングはボールを挟むように配置され、ターゲットに対して平行に構えやすい設計です。上面のサイトライン(ラインマーカー)はセンター部分に短めの直線が一本描かれています。
この短いサイトラインは、人によっては「もう少し長い線の方が安心できる」と感じるかもしれませんが、一方で余計なラインがないぶん狙ったラインに集中しやすいとの意見もあります。
加えて、Spider GTはヘッドサイズ自体もミッドサイズに収まっており、直近モデルのSpider EXよりわずかに小ぶりで、ロリー・マキロイが愛用したSpider Xに近い大きさです。
ヘッドが大きすぎないため構えたときの違和感が少なく、中・上級者でもラインを出しやすい絶妙なバランスとなっています。もちろん高MOIパターらしく慣性モーメントは非常に高いのですが、「ヘッドが小さいぶん振り抜きやすく操作性も良い」との声もあり、大型マレットが苦手なゴルファーにも馴染みやすいデザインと言えるでしょう。
スパイダーGTはどんな人におすすめ?

まず結論から伝えます。スパイダーGTはパッティングの安定性や一貫性を高めたいと願う人におすすめです。特に以下のようなニーズや悩みを持つ人にはおすすめ。
- パッティングの安定性をとにかく向上させたい方
- ミスヒットに強く、寛容性の高いパターを求める方
- 真っ直ぐなストロークをしたい、またはフェースの開閉を抑えたい方(※シングルベンドやセンターシャフトモデルの場合)
- 緩やかなアーク軌道で、自然なフェースローテーションを求める方(※スモールスラントモデルの場合)
- アライメントのしやすさで、ターゲットに正確に構えたい方
- ショートパットでのプレッシャーを軽減したい方
- ブレード型からマレット型への移行を考えているが、操作性も少し残したい方
これらの点に一つでも当てはまるなら、スパイダーGTはあなたのパッティングを大きく変える可能性を秘めています。
ここからはさらに詳しく、ストロークタイプや技量といった具体的な視点から、スパイダーGTがどのような人にマッチするのかを探っていきます。


ストロークタイプを選ばない!ネック形状で最適なモデルを選択可能
スパイダーGTは、幅広いストロークタイプに対応可能なマレットパターです。
その理由は、ネック形状(ホーゼル)によってフェースバランスか軽いトウハングかを選べるため。
これにより、真っすぐ引いて真っすぐ出すストレートストローク派のゴルファーから、緩やかにフェースを開閉するアークストローク派のゴルファーまで、ご自身のストロークに合わせて最適なモデルを選択できます。
例えば、「テークバックでフェースが開きやすく、インパクトで被りやすい」というお悩みを持つ方は、フェースバランスのモデルを選ぶことでヘッドの不要な開閉を抑制し、ストロークの安定性を高めることができます。
逆に、「インパクトでフェースが開かず、ボールを左に引っ掛けてしまう」という悩みを持つ方は、適度なトウハングのあるモデルを選ぶことで、自然なフェースローテーションを促しやすくなるでしょう。
パットに悩む人の強い味方!安定性と寛容性でスコアメイクに貢献
技量的な面では、パッティングに安定感を求める全ての人におすすめできます。
スパイダーGTは慣性モーメントが大きく、ミスヒットに非常に強い設計となっているため、パット数が多いことに悩んでいる中~高ハンディキャップのゴルファーが使用すれば、ミスの許容度が格段に上がり、スコアメイクに直結する可能性を秘めています。
実際に、「平均36パット以上だったのが、Spider GTに替えてから32、27と劇的に改善した」という驚きの声も聞かれるほどです。
特に、短い距離のショートパットでプレッシャーを感じやすい方にとって、スパイダーGTの高MOI設計と優れた直進性は大きな助けとなります。
使用者からは「短いパットでのミスが激減した」「方向性が良くなったことで3〜4mのパットが入る確率が上がった」といった肯定的なレビューも寄せられています。
上級者も納得!プロも認める性能とフィーリング
一方で、スパイダーGTは上級者やローハンデのプレーヤーにも十分マッチする性能を備えています。
従来、マレット型パターを敬遠しがちだった上級者の中にも、「Spider GTはヘッドの座りが良く構えやすい」「インサートの打感がソリッドで、自分の感覚通りのタッチを出しやすい」と高く評価する声があります。
実際、テーラーメイドのSpiderシリーズは長年にわたり多くのツアープロに愛用されてきた実績があり、Spider GT自体も発売当初「2022年には多くのGTがツアーで使用されるだろう」と報じられました。
パッティング巧者であるプロたちが選ぶほど、性能とフィーリングのバランスが良いモデルであり、シビアな要求を持つ上級者でも納得のいく仕上がりと言えるでしょう。
注意点:打感と距離感の慣れ、そして「こだわり派」への提案
ただし、いくつか注意しておきたい点もあります。
スパイダーGTのフェースインサートは、従来モデルと比較してやや硬めで、ボールの伸びが良いとされています。
そのため、特に繊細なタッチが要求される高速グリーンで強めにヒットすると、思った以上に転がりすぎてオーバーしやすいとの指摘も一部にはあります。
非常に柔らかい打感のパターに慣れている方は、最初のうち、この距離感の合わせ方に少し戸惑う可能性があります。
その場合は、まず練習グリーンでじっくりと転がりを確かめながら、ご自身のタッチを調整していくと良いでしょう。
一度この打感と転がりに適応してしまえば、むしろ常に安定した順回転が得られるという大きなメリットを感じられるはずです。
スパイダーGTのホーゼル(ネック)タイプ別の特徴とストローク適合
スパイダーGTは、ネック形状(ホーゼル)の違いによって性能やフィーリングを選べる点も大きな特徴です。
2022年の発売当初は「スモールスラント(小型スラントネック)」と「シングルベント(シングルベンドシャフト)」の2種類がラインナップされていましたが、後にユーザーの要望に応えて「センターシャフト」モデルも追加され、現在は3タイプのネックから選択可能です。
ストロークにわずかでも弧を描く動きがある人はスモールスラント、フェースを極力開閉せず真っ直ぐ動かす人はシングルベントかセンターシャフトを選ぶのが基本的な目安となります。
各ホーゼルによってフェースの開閉度(トウハング角)や見え方が異なり、ストロークタイプとのマッチングも変わってきます。以下ではそれぞれの特徴と適合ストロークについて解説します。


ホーゼルタイプ別のスペック比較
ホーゼルの種類ごとの基本スペックを簡単にまとめると次のようになります。
ホーゼル形状 | トウハング角度* | 特性 | 推奨ストロークタイプ |
スモールスラント(小型スラントネック) | 約21°todays-golfer.com | ヒール寄りオフセット。適度なフェース回転を生みやすく、パワー伝達がダイレクト。 | フェースローテーション中程度のアークストローク向き(インパクトで適度にフェースを返したい人)todays-golfer.com |
シングルベント(クランクネック) | 0°(フェースバランス)todays-golfer.com | シャフトがフェース中央付近に入るオフセットなし形状。ヘッドが開閉しにくく直進性重視。 | ストレートストローク向き(テークバック〜フォローまでフェースを真っ直ぐ動かす人)todays-golfer.com |
センターシャフト | 0°(フェースバランス)todays-golfer.com | シャフトがヘッド中央に直接接続。左右対称で構えやすく、視線がボール後方に一直線に向かう。 | ストレートストローク向き(フェースローテーション極小の人)。※構えたときにシャフトが視界に入るため好みが分かれる |
※トウハング角度はフェースが下を向く角度。数値が大きいほどフェースが垂れ下がり、スイング中にフェースが開閉しやすい(=アーク向き)。0°はフェースバランス。
スモールスラント(ショートスラント)
スモールスラントネックは約21度のトウハングがあり、バックストロークでフェースが適度に開き、インパクトでしっかりフェースを返しやすい設計です。
スラントネック特有の手元側に少し引いたシャフト軸となるため、ボールをしっかりヒットしていく感触が得られやすく、パットに積極性やヘッドの押し感を求める人に向いています。
テーラーメイドの説明では「スモールスラント+Spider GTの高慣性ヘッドにより21°のトウハングが生まれ、中程度のフェースローテーションを伴うストロークに最適」とされています。
また、スラントネック仕様では重心位置がフェース寄りに移動するため、フェースの開閉がスムーズになりボールに順回転を与えやすいメリットもあります。
シングルベント
一方、シングルベントとセンターシャフトはどちらもフェースバランス(トウハング0°)となり、ストローク中にフェースが開閉しにくい特性があります。
シングルベントは一般的なクランクネックで、シャフトがヘッド中央寄りに差さることでオフセット(手元側へのずれ)がない構造です。このため目標に対しスクエアに構えやすく、違和感の少ない見た目となっています。
ストレートにストロークするゴルファーには非常にマッチし、「フェースバランスなので引っ掛けや押し出しが減り真っ直ぐ打ち出せる」という声が多いです。
センターシャフト
センターシャフトも同じくフェースバランスですが、シャフトがヘッド真ん中に直結する独特の形状です。
構えた際にシャフトがボール後方に一直線に伸びる形になるため、ターゲットに対して真っ直ぐにアドレスしやすいと感じる人がいる一方、シャフトが視界に入ることでかえって違和感を覚える人もおり、好みが分かれるタイプと言えます。
ただしセンターシャフトは常にボールを真後ろからヒットできる安心感があり、フェース向きのズレに敏感なゴルファーには根強い人気があります。
Spider GTセンターシャフトは後から追加投入されたモデルということもあり、「待望のセンターシャフト版。フェースバランスでストレート軌道の人に最適」と評価されています。
Spider GTと他のSpiderシリーズモデルとの比較
TaylorMadeのスパイダーシリーズは、多彩なモデル展開によってパター市場をリードしてきました。
Spider GTを検討する上で、他のSpiderモデルとの違いも把握しておくと、自分に合ったモデルを見極める助けになります。
《Spiderシリーズのモデルごとの特徴》
モデル | 特徴 |
Spider GT(2022) | ウィング型オープンフレーム。高MOIと適度なトゥハングのバランス。最新技術搭載で直線的デザイン。 |
Spider X(2019) | コンパクトマレットの傑作。曲線的なデザインでソフトな打感。GTよりわずかにMOI低いが依然高安定。 |
Spider Tour(2016) | オリジナルSpider。丸型大型マレット。ソフトな打感で構えやすいが、最新モデルほどのMOIはない。 |
Spider GT MAX(2023) | Spider GTに可変ウェイト機能追加。1本で特性調整可能。フィッティング重視派向け。 |
Spider GTX(2023) | Spider X風の丸みを帯びた大型版Spider GT。さらに高MOIで安定。より伝統的マレットに近い安心感。 |
いずれも高い性能を持つパターですが、見た目の好みや打感の違い、求める安定性レベルによって選ぶモデルが変わってくるでしょう。
Spider GTはその中でも最新技術を盛り込みつつ適度なサイズ感を保った万能型と言え、Spiderシリーズの中心的存在として位置付けられます。


ここからは、それぞれのモデルについて詳しく見ていきます。
スパイダーGT vs 過去のSpiderシリーズ(Spider X・Spider Tourなど)
Spider X(2019年)
Spider GTの直系先祖とも言えるモデルで、ロリー・マキロイをはじめ多くのプロに使用された名器です。
Spider Xは慣性モーメントとコンパクトさのバランスが良く、丸みを帯びたヘッド形状にシンプルなサイトライン(T字のTrue Pathアライメント)を備えていました。
高比重の真鍮製バーベイトによる周辺加重設計でしたが、Spider GTはそれをさらに推し進めアルミとスチールの複合構造でより極端に重心を外周配置しています。
その結果、Spider GTの方がSpider Xよりも高いMOI(安定性)を実現しています。
一方でSpider GTはフェース近くに重量を配分し直進性とフェースローテーションのバランスを図っているため、Spider Xに比べて重心がやや前寄りでフェースが閉じやすく設計されている面もあります。
打感面ではSpider XのPure Rollインサートはソフトで「打球音が低くマイルド」なのに対し、Spider GTのPure Roll²は前述の通りやや硬めで「カコッという高めの音」がする傾向にあります。
両者とも高MOIで許容性は非常に高く、性能差は僅差ですが、「より直線的・シャープな見た目としっかりした打感を好むならSpider GT、曲線的フォルムとソフトな打感が好みならSpider X」といった選び分けになるでしょう。
Spider Tour(2016年)
ローリー・マキロイやジェイソン・デイ、ダスティン・ジョンソンが使用し一世を風靡した赤いSpider Tourパターです。(赤蜘蛛とも呼ばれている)
当時としては大型ヘッド+高MOIの先駆けで、スパイダーの名を一躍有名にしました。Spider GTとの比較では、まずヘッド形状が全く異なる点が挙げられます。
Spider Tourは丸みを帯びた台形のような形状で、ソール後部両端にタングステンウェイトを搭載する設計でしたが、Spider GTは上述のとおり極端なウィング構造で重量配分も大胆です。
そのためMOI値自体もGTの方が高く、安定性ではGTが一歩リードしています。
一方、Spider Tourはオーソドックスなホーゼル(ダブルベントなど)を採用し、ややフェースバランス寄りで誰にでも使いやすいバランスでした。
Spider GTはネックの選択肢こそ増えましたが、形状がモダンで角ばっているため、伝統的な丸形マレットに愛着があるゴルファーにはSpider Tourの方が構えやすいと感じられるかもしれません。
打感はSpider Tourも樹脂系のPure Rollインサートで比較的ソフトでした。総合すると、オーソドックスで馴染みある形状・打感を重視するならSpider Tour、最新技術と安定性重視ならSpider GTという住み分けになります。
スパイダーGT vs 新世代モデル(Spider GT MAX・Spider GTXなど)
Spider GT MAX(2023年)

Spider GTをベースに、ソールに可動式の重り(40gのタングステンウェイト×2)を搭載した調整機能付きモデルです。
GT MAXではウェイト位置をスライドさせることで重心位置を変え、フェースバランスからトウハングまで3段階の設定が可能になっています。
要するにスモールスラント的な挙動からフェースバランス的な挙動まで1本で調整できるのが最大の特徴です。形状自体はSpider GTとほぼ同じモダンウィングデザインですが、調整機構の分だけ重量が若干増し、ヘッド重量は約10gほど重めとも言われます。
自分で細かくフィッティングを詰めたい上級者には魅力ですが、価格も高価で調整の手間もかかるため、フィーリングが定まっているなら固定ウェイトのSpider GTで十分とも言えます。シンプルさ重視ならSpider GT、カスタマイズ性重視ならSpider GT MAXという選択になるでしょう。

Spider GTX(2023年)

Spider GTの次世代モデルとして投入されたのがSpider GTXです。「X」の名が示すように、かつてのSpider Xを彷彿とさせる丸みを帯びたヘッド形状に、Spider GTの技術(Pure Roll²インサートやFluted Feelシャフト)を融合させています。
形状はSpider GTよりも全体的にラウンドしたシルエットで、サイズもひと回り大きめになっています。そのぶん慣性モーメントもさらに向上し、テーラーメイドによればSpider GT以上の安定性を実現したとのことです。
具体的には、Spider GTが重量の多くを横方向(ウィングの左右)に配分していたのに対し、Spider GTXでは重量をヘッド後方にシフトしており、慣性モーメントが一層高まっています。
そのため打感・打音も若干変化し、Spider GTが「カチッ」とした感触だったのに対し、GTXはもう少しマイルドで静かなフィーリングとの声もあります。見た目も含めよりオーソドックスな大型マレットに近づいたのがSpider GTXと言えるでしょう。
直線的でコンパクトなSpider GTに対し、Spider GTXは大きめヘッドで安心感を求めるゴルファーに向いています。

他社のマレットパターとの比較 – Odyssey Stroke Labシリーズなど
高MOIマレットパターはテーラーメイドの専売特許ではなく、各社から様々なモデルが登場しています。
その中でもオデッセイ(Odyssey)のストロークラボシリーズはSpiderシリーズと双璧を成す存在です。
ここでは代表的なOdyssey ストロークラボ TENとの比較を中心に、Spider GTが他社モデルとどう違うのかを見てみましょう。



設計思想の違い:シャフト vs ヘッドでの重量配分
Odyssey ストロークラボ TENは、オデッセイが誇る高慣性モーメントマレットで、ツノ型(ファング型)や2ボール型など多彩なバリエーションを持つ人気モデルです。
その名の通り、最大の特徴はカーボンとスチールを組み合わせた「ストロークラボシャフト」の採用にあります。
この複合素材シャフトは、中間部を軽量なカーボンに置き換え、余剰重量をシャフト先端と手元側に再配分することで、パター全体の慣性モーメントを最適化し、ストロークの安定性とテンポの向上を狙っています。
これは、ヘッドの構造(オープンフレームやスチールサイドウェイト)で重量配分を最適化し、高MOIを実現しているスパイダーGTとは異なるアプローチです。
オデッセイがシャフトを含めたクラブ全体で慣性モーメントの最適化を図っているのに対し、テーラーメイドはヘッドそのものの設計で安定性を追求している点が、両者の興味深い設計思想の違いと言えるでしょう。
寛容性は互角?ヘッド構造とMOIの比較
ヘッド構造に目を向けると、ストロークラボ TENもスパイダーGTと同様に、ヘッド中央部の重量を削減し、周辺部に重量を配分する「外重・内軽」設計を採用することで、高いMOI(慣性モーメント)を実現しています。
実際に、スパイダーシリーズとストロークラボシリーズを打ち比べても、芯を外した際のヘッドのブレにくさやボールの直進性といった「ミスヒットへの強さ(寛容性)」には、大きな差を感じないというゴルファーが多いようです。
両モデルとも、現代のパターに求められる高い寛容性を備えていると言って良いでしょう。
打感と打音:選択を左右するフィーリングの違い
性能面での差が少ない一方で、選択の大きなポイントとなるのが打感と打音です。
Odyssey TENの多くのモデルには、オデッセイ伝統の白色樹脂系「ホワイトホットインサート」(一部モデルでは「ホワイトホット マイクロヒンジ★インサート」)が搭載されており、その打感は非常にソフトで、打音も静かで落ち着いた印象です。
対して、スパイダーGTに採用されている「Pure Roll™2インサート」は、アルミニウムビームとTPUウレタンを組み合わせたもので、ややしっかりとした手応えと、TENに比べるとやや高めの澄んだ打音が特徴とされます。
このため、「打感の柔らかさを重視するならオデッセイ」「しっかりとしたフィードバックと打音を求めるならテーラーメイド」といったように、ゴルファーの好みによって評価が分かれる傾向にあります。
ある比較レビューでは、「転がり性能はSpider XとStroke Lab TENでほとんど差を感じない。明らかな違いは打球音で、Spiderの方が高め、Stroke Labは低めの音」と具体的に指摘されています。
アライメントとデザイン:構えやすさと見た目の好み
パター選びでは、構えやすさを左右するアライメント機能や、ヘッド全体のデザインも重要な要素です。
Odyssey TENは、モデルによってオデッセイの代名詞とも言える「2ボールアライメント」や、ヘッド上部に引かれた長いサイトライン、あるいは複数の線を組み合わせた「Triple Track(トリプルトラック)」アライメントなど、ターゲットに対して真っ直ぐ構えるための強力な視覚的サポート機能が搭載されている場合があります。
これは、オデッセイが一貫して「パッティングでの構えやすさ」を重視している設計思想の表れと言えるでしょう。
一方、スパイダーGTのアライメントは、ヘッド中央に引かれた比較的シンプルな単一のセンターラインが基本です(モデルによっては異なる場合もあります)。
これは、構えやすさを提供しつつも、アドレス後の過度な視覚情報による集中力の阻害を避ける、といったバランスを考慮しているのかもしれません。
また、ヘッド形状のデザインについても、「スパイダーGTは曲線的で丸みを帯びたデザインが多いのに対し、ストロークラボ TENは直線的なラインを基調としたデザインが多い」といった違いがあり、どちらを好むかはゴルファーの感性によるところが大きいでしょう。
最終的には、自分が最も安心感を持ち、ターゲットに対してスクエアに構えやすいと感じるアライメントとデザインのパターを選ぶことが肝要です。
その他:PING、スコッティ・キャメロンとの比較
高MOIマレットパターの選択肢としては、テーラーメイド スパイダーGTやオデッセイ ストロークラボTEN以外にも、ピン(PING)のヘプラーシリーズやシグマ2シリーズ、スコッティ・キャメロンのファントムXシリーズなどが挙げられます。
これらのモデルもそれぞれ独自の設計思想を持ち、例えばピンは一部モデルで可変重心機能や異なる打感を生み出す複合素材フェースを採用していたり、スコッティ・キャメロンは精密な削り出し製法によるソリッドで一体感のある打感を特徴としていたりします。
しかしながら、総合的な「直進安定性」と「慣性モーメントの高さ」という点においては、依然としてテーラーメイドのSpiderシリーズとオデッセイのStroke Lab TENを含む高MOIマレット群が、市場で高い評価を得ているのが現状です。
実際、スパイダーは「オデッセイのツノ型2ボールと並ぶ高MOIパターの代表格」として、常に比較対象に挙げられる存在です。
最終的にどのパターを選ぶにしても、ぜひ販売店などで実際に試打し、打感や構えやすさ、そして何よりもご自身のフィーリングに最もフィットする一本を見つけてください。
スパイダーGTはその中でも、特に安定した順回転性能と高い直進性のバランスに優れ、幅広いゴルファーにとって納得のいく完成度を持った一本と言えるでしょう。
上記紹介したモデルについて詳しく解説した記事もあるので、ぜひ読んでみてください。


プロ・アマのレビュー・評価まとめ
Spider GTパターに対するプロ・アマチュアからの評価や実際の使用感のフィードバックを見てみましょう。発売以来、多くのレビューが寄せられており、その総評から長所と短所が浮かび上がってきます。


ツアープロの反応
スパイダーシリーズは多くのツアープロが使用してきた実績があります。
Spider GT自体も発売当初から注目を集め、「ツアーでも多数の選手がSpider GTを投入してくるだろう」と報じられました。
実際、具体的な使用プロとしてはスコッティ・シェフラーが2022年にブレードからスパイダー(当時はSpider X)にスイッチし、その年のマスターズを制するなど活躍したことが話題になりました。
彼がスパイダー使用に踏み切った背景には、親友のロリー・マキロイからの助言があったとも言われています。
このエピソードは「ブレードパターを使うトッププロですら、スパイダーシリーズの安定性に信頼を寄せるようになった」ことを象徴しています。
Spider GTについて個別のプロのコメントは多くありませんが、前モデルのSpider Xを長年愛用したマキロイやジョン・ラームが好成績を収めていることからも、そのポテンシャルはツアーレベルで証明済みと言えるでしょう。
専門家・メディアの評価
海外メディアのレビューでは概ね高評価を得ています。Golf Monthly誌のレビューでは「サイズの割に非常に安定しており、打感もソリッド。カラーやネックの選択肢も豊富で、中〜上級者ゴルファーを満足させる出来」と総評され、5点満点中4.5相当の高い評価が与えられました。
特に高MOIによる寛容性、打音・打感の良さ、洗練されたデザイン、複数のネック選択肢が「買いのポイント」とされています。
一方で弱点として挙げられたのは「サイトラインが短く、人によっては物足りない可能性がある」点くらいで、致命的な欠点は指摘されていません。
同様に、Today’s Golferのレビューでも4モデル(GT, Notchback, Rollback, Splitback)の中で**Spider GTが「Headline act(主役)」**と位置付けられ、安定性と完成度の高さが評価されています。
打感に関して専門家の間でも議論がありますが、前述のGolfalotレビューでは「新しいPure Roll²インサートは確かに前作より硬め。しかし音はカチッというよりノック音で、不快ではない。
むしろボール初速の速さに驚くが、慣れれば転がりの良さが武器になる」とまとめられています。つまりやや硬めで弾きの良いフェースという個性はあるものの、それがパフォーマンス向上に繋がっているため概ねポジティブに受け取られているようです。
アマチュアの声
日本のゴルファーからの口コミも上々です。
あるユーザーは「マレット型の中でSpider GT Truss TM1(スラントネック版)は最高傑作。トラスセンターシャフトよりすっきりした見た目で構えやすく、質感も高級感あり。ラウンドでも抜群の安心感でスコアアップに繋がる優しいパター」と絶賛しています。
また別の40代男性ゴルファーは「量販店で試打して即購入。ピン型から久しぶりのスパイダー復帰だが、打感がソフトでフィーリング良く、ヘッドの大きさや重さも気にならない。カウンターバランス的な安定感があって非常に好印象」とコメントしています。
実際にコースで使用した感想としては、「初ラウンドでなんと28パットという自己ベスト!非常に満足。黒色が品薄で望みの色が手に入らなかったが気にならない。打感も自分には合っていた。オデッセイやピンのパターよりもしっくりくる」という声も見られ、即座にエースパターに昇格したユーザーも多いようです。
一方で僅かに見られるネガティブ意見としては、「弾きが良すぎて距離感の調整に苦労した」「芯を外すと想像以上に転がってしまう感じがする」というものがあります。
これは前述の硬めインサートゆえの指摘ですが、慣れの問題という範疇でしょう。また「構えたときセンターシャフトだとサイトラインとシャフトが被り気味なのが気になる」という指摘もありました。
しかし総じて「構えやすくミスに強い」「直進性が素晴らしい」「狙ったところに打ち出しやすい」といった肯定的な評価が大半を占めています。
スパイダーGTの総合評価(6項目評価とレーダーチャート)
最後に、スパイダーGTパターを6つの評価項目で客観的に採点し、その特徴をレーダーチャートでまとめます。
評価項目は「操作性(方向の出しやすさ)」「寛容性(ミス許容度)」「ヘッドの重さ・振り心地」「打感・フィードバック」「重心設計・安定性」「コストパフォーマンス」の6つです。それぞれ5点満点で評価しました。

操作性(方向の出しやすさ)4点
シャープなウィング形状と適度なサイズ感で構えやすく、真っ直ぐ引きやすいと高評価です。【直進性が良くラインに乗せやすい】との声が多く、アライメントの短いラインも集中力を高めると好意的に捉えるユーザーが多いようです。
ただセンターシャフト版ではシャフトが視界に入り好みが分かれるため-0.5しました。
寛容性(ミス許容度)5点
ここは文句なしの満点評価です。超高MOI設計により芯を外した時のヘッドのブレが極小で、方向・距離ともにミスの影響が最小限に抑えられます。
実際「多少芯を外しても大ケガにならない」とのレビュー通り、従来比でも寛容性はトップクラスです。
ヘッドの重さ・振り心地 4点
ヘッド重量約365gは平均的マレット並みですが、深い重心と高慣性のおかげでストローク中は安定感があります。「重すぎず振りやすい」との声もあり、違和感は少ないようです。
ただ高MOIゆえにヘッドが利きすぎて距離感が合わないと感じる人も一部いるため平均より少し高い4点に留めました。
打感・フィードバック 4点
Pure Roll²インサートの打感はやや硬めですが、そのぶん打球音含めフィードバックが明確でタッチを出しやすいと感じる人が多いようです。「打感がしっかりしている」「ソフトすぎず好み」という声が多く、プロ好みの感触と言えます。
ただ究極のソフトフィールを求める人には硬く感じる可能性もあるため満点は控えました。
重心設計・安定性 5点
重心深度と周辺加重による安定性は文句なしのトップ評価です。低慣性パターでは起こりがちなインパクトズレによるフェース開閉やブレが最小限で、常に安定したストロークをサポートします。
「直進安定性がものすごい」と驚きの声が上がるほど、慣性モーメントの効果を体感できるでしょう。
コストパフォーマンス 4点
定価は税抜44,000円(税込48,400円)と決して安くはないですが、近年の高性能パターの中では標準的な価格帯です。むしろ発売から時間が経った現在では新品が約2〜3万円程度まで値下がりしており、中古市場でも**1.5万円前後〜**と手に入れやすくなっています。
最新テクノロジー満載のパターがこの価格で買えるならお買い得と言え、コストパフォーマンス評価は高めの4点としました。
まとめ
TaylorMade スパイダーGTパターは、最新テクノロジーを駆使した高慣性モーメント設計と洗練されたデザインで、パッティングの安定性と順回転性能を大きく向上させたモデルです。
スロープロからビギナーまで幅広いゴルファーに恩恵をもたらし、ホーゼルタイプの選択で自分のストロークに最適化できる柔軟性も備えています。
その卓越した直進性とミス許容性は多くのレビューが物語る通りで、パット数削減に直結する強力な武器となるでしょう。
もしあなたが「もっとパットを安定させたい」「ショートパットの不安をなくしたい」と感じているなら、ぜひ一度スパイダーGTを手に取ってみてください。適切なモデルを選べば、きっとグリーン上で心強い相棒になってくれるはずです。