「今日は距離感が合わない…」
「スタートホールで大オーバーして、そこから怖くて打てなくなった」
そんなふうに、その日のパッティングが「運任せ」になっていませんか?
多くのゴルファーが「距離感=センス(才能)」だと思い込んでいます。
しかし、それは大きな間違いです。
距離感は、「歩測」と「振り幅」の方程式を使えば、誰でも機械的に作ることができます。
センスのあるなしに関わらず、今日からすぐに実践できる技術なのです。
この記事では、感覚に頼らず、論理的に距離を合わせるプロの技術を伝授します。
これを読めば、あなたのパッティングは「イチかバチかのギャンブル」から「計算できるゲーム」に変わりますよ。
【結論】距離感は「感覚」ではなく「歩測」で作るもの
アマチュアゴルファーが距離感を合わせられない最大の理由は、「見た目」だけでなんとなく打っているからです。
カップを見て「あそこまでこれくらいかな?」と感覚だけで打つのは、目盛りのない定規で線を引くようなもの。
その日の体調や視覚効果(錯覚)によって、簡単に狂ってしまいます。
一方、パターの上手い人やプロは、見た目だけで打っていません。必ず「歩測(距離)」×「基準の振り幅」という計算式を持っています。
「10歩なら、右足の小指まで引く」
この自分だけの基準さえあれば、どんなゴルフ場に行っても、どんなに緊張していても、距離感は大きく狂いません。
今日から「感覚派」を卒業し、「計算派」になりましょう。それが、3パットを撲滅する唯一にして最短のルートです。
なぜあなたのパターは「距離」が合わないのか?
では、なぜあなたの距離感は日によってバラバラなのでしょうか?
その原因は主に3つあります。これらを理解せずに練習しても、穴の空いたバケツに水を入れるようなものです。
| 原因 | 症状 | 対策 |
|---|---|---|
| 基準がない | 日によって距離感がバラバラ | 「歩測」と「振り幅」をリンクさせる |
| 芯を外す | 思ったより転がらない(ショート) | 芯で捉える練習(輪ゴムドリル等) |
| リズムが悪い | 大オーバーや大ショート | メトロノーム等で一定テンポを刻む |
1. 自分の中に「基準」がないから
あなたは「平らなグリーンの5mは、どれくらいの振り幅で打ちますか?」と聞かれて、即答できますか?
もし「これくらい…かな?」と答えに詰まるなら、それが距離感が合わない最大の原因です。
自分の中に確固たる「基準(物差し)」がないため、毎回その場の雰囲気で打ってしまっています。
これでは、たまたま合う日はあっても、合わない日に修正することができません。「右足の外側まで引いたら5m」といった明確な基準を持つことが、安定したパッティングの第一歩です。
2. 芯(スイートスポット)で打てていないから
いくら振り幅が完璧でも、パターの芯(スイートスポット)を外してしまえば、ボールに力が伝わらずショートします。逆に、たまたま芯に当たると、今度はオーバーしてしまいます。
「今日はショートが多いな」と感じる日は、距離感のズレではなく、単に芯を外しているだけの可能性が高いです。
距離感を語る前に、まずは毎回同じ打点で捉える技術が必要です。これは自宅のパターマットで、芯に当てる練習(輪ゴムドリルなど)を繰り返すことで養えます。
3. リズムが毎回バラバラだから
「パンチが入る(急加速)」や「緩む(急減速)」は、距離感を狂わせる諸悪の根源です。振り幅が同じでも、ヘッドスピードが速ければ飛びますし、遅ければ飛びません。
上手い人のストロークを見ると、どんなに短いパットでも長いパットでも、「イチ、ニ」というリズムが一定です。
メトロノームアプリなどを使って、自分にとって心地よいテンポ(例:毎分70〜80拍など)を見つけ、常にそのリズムで振るように心がけましょう。リズムが整えば、距離感は驚くほど安定します。
【実践編】朝の練習グリーンで完了!「基準」の作り方
ここからは具体的なノウハウです。ラウンド当日の朝、練習グリーンで必ずやってほしい「基準作り」の3ステップを紹介します。
これをやるだけで、その日のスコアが劇的に変わります。
ステップ1:平らな場所で「10歩」を歩測する
練習グリーンに着いたら、まずはボールを打たずに、平らな場所を探してください。
そして、カップから離れていき、「通常の歩幅で10歩(約7〜8m)」の地点にボールを置きます。
この時、カップに入れる必要はありません。とにかく「上り下りのない、平らなライン」を見つけることが最優先です。傾斜があると基準が作れないので、慎重に場所を選んでください。
ステップ2:カップを見ながら「素振り」で距離を合わせる
ボールの横に立ち、カップ(10歩先)をじっと見つめます。そして、ボールを見ずに、カップを見たまま素振りを繰り返してください。
人間の脳は非常に優秀です。ターゲット(カップ)を見て「あそこまで届け」と念じながら素振りをすると、自然と脳が適切な振り幅を弾き出し、体に指令を送ります。
「これくらいの強さかな?」という感覚が手に伝わってくるまで、何度も素振りをしてください。
ステップ3:その「振り幅」を自分の体で覚える
「よし、これくらいだ」という感覚が決まったら、その素振りの振り幅を目視で確認します。
テークバックした時、ヘッドはどこにありますか?
- 「右足のつま先の前」ですか?
- 「右足の小指の外側」ですか?
- 「靴1足分外側」ですか?
その位置を覚えてください。
もしそれが「右足の小指」なら、「今日のグリーンの速さでは、10歩=右足小指」というのが、あなただけの絶対的な基準になります。これを覚えたらもう迷うことはありません。
コースでの応用!「基準」を使った距離の計算式
基準(例:10歩=右足小指)ができたら、あとはコースでそれを応用するだけです。
複雑な計算は必要ありません。シンプルな「足し算」と「引き算」で攻略できます。
基本は「足し算」と「引き算」だけ
ボールからカップまで歩測をして、その歩数を基準に当てはめます。
- 15歩の距離なら?
「10歩の基準(右足小指)」+「ちょっと大きく(靴半分くらい)」振る。 - 5歩の距離なら?
「10歩の基準(右足小指)」の半分くらいの振り幅で振る。
このように、厳密に「何センチ引く」と決めるのではなく、基準をベースに「プラス・マイナス」する感覚でOKです。
基準という「ゼロ地点」があるからこそ、微調整が可能になるのです。
上り・下りの計算方法
傾斜がある場合も、全て「歩数」に換算して計算します。
- 上りの場合
見た目の距離に、傾斜分をプラスします。
「見た目は10歩だけど、上りがキツイから+3歩だな」→ 「13歩」打つつもりで構える。 - 下りの場合
見た目の距離から、傾斜分をマイナスします。
「見た目は10歩だけど、下りが速いから−3歩だな」→ 「7歩」打つつもりで構える。
全てを「平地の距離」に変換してから、基準の振り幅を当てはめるのがコツです。
これなら、「上りだから強く打とう」としてパンチが入るミスを防げます。
どうしても合わない時に!「感覚」を磨く特効薬ドリル
基準を作っても、どうしてもタッチが合わない日や、感覚がおかしくなってしまう日はあります。
そんな時の緊急処置として、即効性のあるドリルを2つ紹介します。
カップを見ながら打つ「ルックアップ奏法」
ジョーダン・スピースなどのトッププロも実践している方法です。
通常はボールを見て打ちますが、このドリルでは「カップ(ターゲット)だけを見て」打ちます。
ボールを見ていると、どうしても「打ち方」や「振り幅」に意識がいきがちです。
しかし、カップを見続けることで、脳に入ってくる視覚情報(距離)と、手の感覚(タッチ)がダイレクトに直結します。「あそこまで投げる」という感覚でストロークできるため、距離感のズレが強制的に修正されます。
ロングパットの距離感が全く合わない時に、ぜひ試してみてください。
右手一本で転がす「手投げ感覚ドリル」
パターを持たず、ボールを右手(利き手)で持ち、下手投げでカップに向かって転がします。
ゴミ箱にゴミを投げるような感覚です。
この時、どれくらいの振り幅で、どれくらいのスピードで腕を振りましたか?
その「腕の振り感」こそが、あなたが本来持っている距離感です。手で転がした時のイメージをそのままパターのストロークに落とし込むことで、失っていた距離感を取り戻すことができます。
スタート前の練習グリーンで、パターを持つ前に数球転がしておくと効果的です。
よくある質問(Q&A)
Q. 歩測をするのが恥ずかしいのですが…
A. 恥ずかしがる必要は全くありません。むしろやるべきです。
上手い人やプロゴルファーを見てください。全員必ず歩測をしています。
歩測をせずに見た目だけで打つ方が、同伴者からは「距離感を合わせる気がないんだな」「適当に打っているな」と思われてしまいます。
スロープレーにならないよう、キビキビと歩けば全く問題ありません。
堂々と歩測をして、自分の距離感を信じて打ってください。その姿は、間違いなく「上手いゴルファー」のそれです。
Q. グリーンが速い日と遅い日で基準は変える?
A. いいえ、自分の「基準の振り幅」は変えません。
ここが非常に重要なポイントです。
「今日は速いから、基準の振り幅を小さくしよう」とすると、スイング自体が緩んでミスになります。
変えるのは振り幅ではなく、「転がる距離の計算」です。
- 速い日:いつもの「10歩の振り幅(右足小指)」で打つと、12歩転がる。
→「今日は+2歩転がる日だ」と認識する。 - 遅い日:いつもの「10歩の振り幅」で打つと、8歩しか転がらない。
→「今日は−2歩の日だ」と認識する。
この「誤差」を朝の練習で把握し、コース上の計算に組み込むのがプロの調整法です。
自分のスイング(基準)は常に一定に保つことが、安定感を生み出します。
まとめ:距離感は「計算」できれば武器になる
パターの距離感は、生まれ持った才能ではありません。
正しい手順を踏めば、誰でも手に入れられる「技術」です。
- 朝の練習グリーンで、平らな10歩を見つける。
- 10歩に対応する「自分の振り幅」を決める。
- コースでは歩測をして、基準の振り幅を足し引きする。
これだけで、あなたのパッティングは劇的に変わります。
「センスがない」と嘆く前に、まずは次回のラウンドで「10歩の基準」を作ってみてください。
パッティングが「運任せのギャンブル」から「計算できるゲーム」に変わり、3パットの恐怖から解放されるはずです。

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