「パターは真っ直ぐ引いて、真っ直ぐ出す」
ゴルフを始めた頃にそう教わり、今でもその言葉を金科玉条(きんかぎょくじょう)のごとく信じて練習していませんか?
「でも、どうしてもヘッドがふらつく…」
「真っ直ぐ打とうとすればするほど、体がロボットのように固まって動かなくなる…」
もしあなたがそんな切実な悩みを抱えているなら、朗報です。
その悩み、決してあなたの練習不足やリズム感のなさのせいではありません。もしかすると、「真っ直ぐ教え」そのものが間違いだったとしたらどうでしょう?
実は、世界の一流プロの中に、定規で引いたような完全な直線でストロークしている選手は一人もいません。
彼らが実践しているのは、人間の体の構造に逆らわない「自然な円軌道(イントゥイン)」なのです。
この記事では、あなたを長年苦しめてきた「直線の呪縛」をついに解き放ち、もっと楽に、そして劇的にカップイン率を高める「正しい軌道」の作り方を伝授します。
今日から、もう無理に真っ直ぐ引く必要はありません。
1. 【真実】「真っ直ぐ引いて真っ直ぐ出す」がパット下手の原因だった
いきなり結論から言いますが、アマチュアゴルファーがパターを苦手とする最大の原因、それは間違いなく「真っ直ぐ引こうとしすぎていること」にあります。
「え、基本じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はこの「真っ直ぐ神話」こそが、あなたのスムーズなストロークを阻害している諸悪の根源なのです。
ここでは、なぜ直線イメージが間違いなのか、そしてその意識がどのようなミスを生むのかを、科学的な視点で解説します。
なぜ?解剖学的に「直線ストローク」は人間に不可能
パッティングのストロークは、首の付け根(背骨)を支点とした「回転運動」です。
コンパスをイメージすると分かりやすいでしょう。針(支点)を固定して鉛筆を動かせば、どう頑張っても描かれる線は「円」になりますよね?
これを無理やり直線に引こうとするのは、コンパスの針をズラしながら動かすようなもの。これは極めて不自然で、高度な器用さが求められる動きなのです。
人間がロボットのようにレールの上を平行移動できるなら話は別ですが、人間が体を回して打つ以上、ヘッドの軌道は必然的に「緩やかな円軌道(イントゥイン)」になるのが物理的に正しい姿です。
タイガー・ウッズも、ベン・クレンショーも、パターの名手と呼ばれる選手たちは例外なく、緩やかなアーク(円弧)を描いています。
「真っ直ぐ」というのは、あくまで「真っ直ぐ打っているように見える」という感覚の話であり、物理的な事実ではないのです。
「真っ直ぐ」への執着が「イップス」と「パンチ」を生む
「真っ直ぐ引かなきゃ」という意識が強すぎると、人間の脳は無意識のうちに「手先」という最も器用なパーツを使って軌道を微調整しようとしてしまいます。
| 項目 | 直線イメージ(NG) | 円イメージ(OK) |
|---|---|---|
| 体の動き | 固定・ロック | 回転・スムーズ |
| 使う筋肉 | 手先・指先(小筋群) | 背中・肩(大筋群) |
| ミスの傾向 | パンチが入る、緩む | 軌道が安定する |
| 精神状態 | 緊張、恐怖心 | リラックス、安心感 |
- 「テークバックで数ミリでもヘッドが内側に入るのが許せない」
- 「インパクトでフェース面をスクエアに保とうと手首をガチガチに固める」
この「手先の介入」こそが、インパクトで緩んでショートしたり、逆に不安から打ち急いで強烈な「パンチ」が入ったりする原因です。
最悪の場合、「動かした瞬間にズレる気がする」と手が動かなくなるイップスに繋がることもあります。
実は、パターが上手い人ほど「大体この辺に引けばいいや」とアバウトに考えています。
「円でいいんだ」「内側に引いていいんだ」と開き直った瞬間、驚くほどスッとテークバックが上がるようになる人は多いのです。
完璧主義を捨てること。それが、スムーズなストロークへの第一歩です。
2. 道具で判断!あなたのパターに合った「正しいアーク」診断
「円軌道が良いのは分かったけど、どのくらい?」
「私のパターでも、インサイドに引いていいの?」
その答えは、実はあなたの持っているパターが教えてくれています。一口に「円軌道」と言っても、使うパターの形状によって、描くべき「円の大きさ(アークの深さ)」は異なります。
| パター形状 | 推奨軌道 | アークの深さ | フェース開閉 |
|---|---|---|---|
| ピン型・L字 | イントゥイン | 深い(扇形) | 多め |
| マレット型 | ストレートに近いイントゥイン | 浅い(なだらかな円) | 少なめ |
ここでは、代表的な「ピン型」と「マレット型」それぞれについて、どの程度のイントゥイン軌道が正解なのかを診断します。
自分の道具の特性を知ることで、迷いなく自信を持ってストロークできるようになります。
「ピン型・L字」は『イントゥイン』でフェースを開閉させる
いわゆる「トウヒールバランス」と呼ばれるタイプ(ピン型やL字型)を作っているメーカーは、パターの構造上「フェースが開閉しやすい」ように設計しています。
机の上にヘッドを置いて、トウ(先端)側が下を向くのがこのタイプです。
このパターを使っているのに、無理に真っ直ぐ動かしてフェース面をスクエアに維持しようとするのは、パターの性能を自ら殺しているのと同じこと。F1カーに乗って、渋滞の街中を走るようなものです。
正解のイメージは、「ドアの開け閉め」です。
テークバックでドアを開くように少しフェースを開き(インサイドに引き)、フォローで閉じる。
しっかりとした「扇形」のアークを描くことで、パターの重心が効果的に働き、ボールをしっかりと捕まえてくれます。
「ちょっと開いて閉じる」動きこそが、ピン型の真骨頂なのです。
「マレット型」でも『完全な直線』はあり得ない
「私はマレット型(フェースバランス)だから真っ直ぐでしょ?」
「大型マレットはオートマチックに真っ直ぐ打つためのものじゃないの?」
そう思った方、それは半分正解で半分間違いです。
たしかにマレット型は、慣性モーメントを大きくしてフェースの開閉を抑えるように設計されています。しかし、それでも「完全な直線」ではありません。
なぜなら、前述した通りパターには「ライ角(約70度)」があるからです。
たとえフェースバランスであっても、斜めに棒が刺さっている物体を回転させれば、どうあがいても軌道は円になります。
マレット型であっても、「超なだらかな円軌道」が物理的な正解です。
「定規で引いたような直線」ではなく、「地球の丸み」くらいの緩やかなアークをイメージしてください。
「マレットだから直線じゃなきゃダメだ」とガチガチに固めて、ロボットになろうとする必要はありません。
自然なアークを受け入れた方が、マレット型の恩恵である直進性もさらに活きてくるのです。
3. 勝手に軌道が安定する!脱・直線ストロークの特効薬ドリル
理屈は分かっても、長年の癖はなかなか抜けませんよね。
「よし、円軌道にするぞ!」と意識しすぎると、今度はインサイドに引きすぎて引っかけのミスが出たりするものです。

そこで、頭で考えなくても勝手に「正しい円軌道」になってしまう、即効性のあるドリルを3つ紹介します。
道具はほとんど必要ないので、自宅のリビングで今すぐ試してみてください。
身体の軸を感じる「お尻・頭の壁付け」素振り
家の中で今すぐできる、そして最も効果を実感しやすい「最強のドリル」です。
- 壁にお尻(または頭)を軽くつけてアドレスする。
- その接触点がズレないようにストローク(素振り)する。
これだけです。
実際にやってみるとわかりますが、お尻を壁につけたまま腕だけで「真っ直ぐ」引こうとすると、すごく窮屈で、体がロックされるような感覚になるはずです。
逆に、身体の回転(ボディターン)に任せて自然に「インサイド」に引くと、驚くほどスムーズに振れることに気づくでしょう。
このドリルが素晴らしいのは、「ヘッドをどう動かすか」という迷いから解放されることです。
単に「軸(お尻の位置)を動かさない」ことに意識を向けるだけで、結果としてヘッド軌道は勝手に美しい円になります。
毎朝5分、この壁付け素振りをするだけで、あなたのストロークは見違えるほど安定するはずです。
手先の悪さを封じる「脇タオル」と「ショルダーストローク」
「どうしても手先でコネてしまう」「インパクトでパンチが入る」という人には、この古典的かつ王道のドリルが効きます。
スポーツタオルを畳んで両脇に挟み、それが落ちないようにストロークしてください。
これを行うと、腕と体幹(胴体)が完全に一体化し、強制的に「ショルダーストローク(肩でのストローク)」にならざるを得なくなります。
人間の手先は器用すぎるため、自由にしておくとついつい直線の微調整を行ってしまいます。
脇を締めて大きな筋肉(広背筋など)を使う環境を作れば、手先のような小細工は物理的に不可能になります。結果として、身体の回転に沿ったシンプルな円軌道しか描けなくなるのです。
世界中のツアープロたちが、練習グリーンで何年もこのドリルを繰り返しているのには、こういった明確な理由があるのです。

上級者の視点「ヘッドを見ずにシャフトの軌道を追う」
「どうしてもヘッドが揺れるのが、自分の目で見て気になっちゃう…」
そんな繊細な感覚を持つあなたは、視点(フォーカスポイント)を変えるだけで問題が解決することがあります。
ストローク中、ヘッドを見るのをやめて、「シャフト(または手元)」を見てください。
そして、「シャフトが自分(スタンスのライン)と平行に動いているか」だけをぼんやりとチェックします。
ヘッドは遠心力で動く先端部分なので、どうしても動きが大きく、派手に見えます。その揺れが視覚情報として脳に入ると、脳は過剰に反応して修正指令を出してしまいます。
しかし、手元側の動きは非常に小さくシンプルです。
「ヘッドを操作する」のではなく「手元のレールをなぞる」。この意識に変えるだけで、驚くほどストロークが落ち着き、結果としてきれいなアークが描けるようになります。
まとめ
今日から、「パターは真っ直ぐ引くもの」という常識は、きっぱりとゴミ箱に捨てましょう。
- 人間が打つ以上、「真っ直ぐ」は不自然であり、解剖学的にも不可能。
- 「真っ直ぐ打とう」とする強迫観念こそが、イップスやミスの最大の原因。
- ピン型ならしっかりアークを、マレット型でも緩やかなアークを描くのが正解。
「ちょっとインサイドに引いて、身体の回転で打つ」
この事実を受け入れた瞬間、あなたのパッティングはもっと自由で、もっと簡単なものになります。
次回の練習場では、定規のような線を引こうとするのはやめて、コンパスのように滑らかな円を描いてみてください。
「あれ、こんなに適当な感じで入るの?」
そんな嬉しい驚きとともに、パターマットの上のボールが吸い込まれるようにカップインしていくはずです。

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