「あ、パンチが入った」
「また右手が悪さをした…」
大事なショートパットで、頭では分かっているのに、インパクトの瞬間に右手が勝手に動いて外してしまう。
そんな経験に心当たりはありませんか?練習しても直らないそのミスは、あなたの技術不足ではありません。
「右手の使いすぎ(過干渉)」が原因である可能性が高いです。
その特効薬こそが、世界中の一流プロたちがこぞって採用する「クロウグリップ(Claw Grip)」です。
この記事では、クロウグリップの正しい握り方から、誰も教えてくれない「ロングパットが打てなくなる問題」の解決策、そして明日から実践するための導入ステップまでを徹底解説します。
パターに悩める数多くのアマチュアを救ってきた筆者が、実戦で使える「攻略本」としてお届けします。
そもそもなぜ「クロウグリップ」なのか?右手を封印する最大のメリット
なぜ今、これほどまでに多くのプロゴルファーが、一見奇妙に見える「クロウグリップ」を採用しているのでしょうか?
それは流行りだからではありません。
パッティングにおける最大の敵である「右手の悪さ」を、物理的に封印できる唯一無二の方法だからです。
結論:ショートパットの天敵「パンチ」と「緩み」を物理的に防げる
通常のグリップ(逆オーバーラッピングなど)では、どうしても利き手である右手の感覚が出すぎてしまいます。
その結果、ここ一番のプレッシャーがかかる場面で、
- 無意識に強く叩いてしまう(パンチが入る)
- 逆にビビってインパクトが弱くなる(緩む)
というミスが起こります。これは本能的な反応なので、メンタルだけで抑え込むのは至難の業です。
しかし、クロウグリップは構造上、右手を「添えるだけ」の形にします。指先でシャフトを挟む、あるいは添えるだけの状態では、物理的に力を加えることができません。
つまり、強制的に「オートマチックなストローク」にならざるを得ないのです。これが、ショートパットの劇的な安定を生む最大の理由です。
高速グリーン化する現代ゴルフとの相性が抜群
もう一つの理由は、ゴルフ場の環境変化です。近年のコース、特にトーナメントコースはグリーンが非常に高速化しています。
昔のように「パチン!」と強くヒットする必要はなくなり、むしろ「転がりを良くする(スムーズに転がす)」ことが求められています。
ヘッドの重みだけで、さらっと振れるクロウグリップは、現代の高速グリーン攻略において非常に理にかなった選択なのです。
【チェックリスト】あなたがクロウグリップに変えるべき兆候
もし以下の項目に一つでも当てはまるなら、あなたはクロウグリップを試すことで劇的にスコアが良くなる可能性があります。
- ショートパットで「引っかけ(左へのミス)」が多い
- バックスイングでヘッドがグラグラ揺れる気がする
- ロングパットよりも、1mのショートパットの方が緊張する
- インパクトで「パンチが入る」感覚が頻繁にある
これらは全て、右手が悪さをしているサインです。クロウグリップは、まさにこの悩みを解決するための特効薬です。
感覚で掴む!クロウグリップの握り方・全パターン解説
「写真や動画を見ても、結局どう握ればいいの?」
「右肘の位置は?指の力加減は?」
そんな疑問をなくすために、ここでは徹底的に「動作の解像度」を上げて解説します。実際にパターを持って、この文章を読みながら一挙手一投足をトレースしてください。

基本にして王道「ペンシル型(鉛筆持ちスタイル)」
最もポピュラーで、最初に試してほしいのがこの形です。
【詳細な握り方手順】
- 左手のセット: いつも通り握りますが、通常よりもしっかり(強めに)握ってください。ストロークの主役は左手です。
- 右手の準備: 右手のひらを「ターゲット方向(カップ)」に向けます。
- 挟む位置: 親指と人差し指で「V字」を作り、グリップを挟みます。この時、人差し指は「側面」ではなく「腹」をグリップ側面に当てると安定します。
- 残りの指: 中指・薬指・小指は、軽く握り込むか、邪魔にならないようにそっと添えるだけにします。
- 右肘のポジション: ここが最重要です。右肘は脇腹につけず、少し体から離して(浮かして)リラックスさせてください。脇を締めると右手が使いやすくなってしまいます。
【実践のコツ】
親指と人差し指で、「ポテトチップスを割らないように」優しくつまんでください。
そしてストローク中は、「右の手のひらでカップに挨拶し続ける」イメージです。手のひらの向きが変わらなければ、フェース面も変わりません。
安定感特化「4本指型(バタフライスタイル)」
ペンシル型でも手首が動いてしまう…という方におすすめの、より固定力の高いスタイルです。
【詳細な握り方手順】
- 指を揃える: 右手の指4本(人差し指〜小指)をピタッと隙間なく揃えます。
- 壁を作る: 揃えた4本指全体を、グリップの右側面に当てます。
- 裏から支える: 親指をグリップの裏側(自分から見て裏)に回し、4本指と挟むように支えます。
- 手首の角度: 右手首は甲側に少し折れた状態でロックされます。この角度を死守します。
【実践のコツ】
右手の指4本で、グリップの側面に「動かない壁」を作るイメージです。
ストローク中は「握る」感覚はゼロ。左手がリードして動くグリップを、右手の壁が横からサポートしてあげる感覚です。手首が物理的に固定されるため、コネる動きが完全に消えます。
クリス・ディマルコ型(元祖クロー)」
かつてタイガー・ウッズと死闘を演じた名手、クリス・ディマルコが採用していた元祖スタイルです。
【詳細な握り方手順】
- 手の向き: 右手のひらを「自分の方(体の方)」に向けます。
- フックを作る: 指を軽く曲げて「フック(鉤爪)」のような形を作ります。
- 上から配置: そのまま上からグリップに引っ掛けます。人差し指と中指の間でシャフトを挟む選手もいます。
- 右腕の一体化: 右前腕の角度とシャフトの角度が揃うように構えます。
【実践のコツ】
右腕全体でパターを「上から吊っている」ような感覚になります。右手の指先感覚よりも、「右腕全体の枠組み」で打ちたい人に適しています。
結局どれがいい?迷ったら「ペンシル型」から始めよう
まずは、微調整が効きやすい「ペンシル型」から入るのが鉄則です。
重要ポイント:
どの握り方でも共通するのは、「主導権は左手(または左肩)にある」ということです。右手はあくまで「添え物」であり、エンジンの役割を持たせてはいけません。
導入前に知っておくべきデメリットと「3つの攻略法」
いいこと尽くめに思えるクロウグリップですが、実は大きな弱点があります。
多くの人がここで挫折し、元のグリップに戻ってしまいます。
しかし、あらかじめ対策を知っていれば怖くありません。
最大の壁は「ロングパットの距離感」が死ぬこと
右手の感覚(パンチ力)を封印するということは、裏を返せば長い距離を打つためのパワーが出しにくい」ということです。
今まで右手で「パチン!」と打って距離を合わせていた人は、クロウグリップにした途端、
「あれ? 全然転がらない…」
「どれくらい振ればいいのか全く分からない(ノー感)」
という状態に陥ります。
これが最大の壁です。ここを乗り越えるための「3つの攻略法」を伝授します。

攻略法①:ロングパットだけ「いつものグリップ」に戻す
これは「逃げ」ではありません。立派な戦略です。
世界のトッププロでも、ロングパットとショートパットでグリップを変えている選手はいます。
- 5m以内(ショートパット): クロウグリップで方向性と転がり重視
- 5m以上(ロングパット): 通常のグリップで距離感重視
と割り切ってしまいましょう。
「全部クロウでやらなきゃ」という固定観念を捨てることが、成功への近道です。
攻略法②:「振り幅」だけを信じるメトロノーム打法
もしロングパットもクロウで打ちたいなら、感覚を捨てて「機械」になりきってください。
「これくらい強く打とう」という感覚で打つからショートします。
- 「右足の外まで引いたら、5m」
- 「右足のさらに靴一足分外まで引いたら、10m」
といった具合に、「振り幅」と「転がる距離」の基準を自分の中で作ってください。
インパクトの強さではなく、振り幅という「物理的な数値」だけを信じて打つ。これがクロウグリップでの距離感の正体です。
攻略法③:グリップ自体を「太め」に変えて相乗効果を狙う
道具の力を借りるのも有効です。
細いグリップのままだと、指先が余ってしまい、どうしても遊び(グラつき)ができやすくなります。
そこで、「SuperStroke(スーパーストローク)」のような、太めのグリップ(ノンテーパー推奨)に変えてみてください。
太いグリップは、それ自体が手首の動きを抑制する効果があります。クロウグリップ × 太グリップの相乗効果で、右手のフィット感が増し、驚くほど安定します。

明日から実戦投入!クロウグリップ習得の3ステップ
「よし、やってみよう!」と思ったあなたへ。
いきなりコースで試して「やっぱりダメだ」と諦めないための、確実な導入ロードマップです。
Step1:自宅で「右手一本打ち」をして転がりを確認
まずはボールを打たなくてOK…と言いたいところですが、感覚を掴むために自宅のパターマットで「右手一本打ち」を試してください。
- クロウグリップの形のまま、右手だけでパターを持ちます。
- その状態でボールを打ちます。
- 手首を使わずに、肩の動きだけでボールを転がせるか確認してください。
手首を使って弾いてしまうと、うまく当たりません。
「右手首の角度を変えずに、腕全体で運ぶ」感覚が掴めたら合格です。
Step2:練習グリーンで「5m・10m」の基準を作る
コースに行ったら、朝の練習グリーンで、まずショートパットではなくロングパットを打ってください。
おそらく、最初は思ったよりショートするはずです。
そこで「思ったより転がらないな。じゃあこれくらいの振り幅が必要か」という、新しい距離感の基準(アップデート)を行ってください。
これをしておかないと、スタートホールのロングパットで大ショートして、パニックになります。
Step3:コースでは「右にプッシュ」だけ気をつける
実戦投入初日に最も出やすいミス、それが「右へのプッシュアウト(すっぽ抜け)」です。
右手が使えない分、フェースを返す動きが入らないため、開いたまま当たりやすいのです。
【対策】
- ボールの位置を、通常より「ボール半個分左」に置いてください。
- これだけで、フェースがスクエアに戻った位置でインパクトしやすくなります。
コースでは「入るか入らないか」ではなく、「右手の悪さをせずに打てたか?」だけを評価基準にしてください。
右手が悪さをしなければ、イップスの恐怖からは解放されているはずです。

まとめ:クロウグリップは「入らない恐怖」との決別宣言
クロウグリップは、単なる「変則的な握り方」ではありません。
あなたのゴルフ人生から、「ショートパットのイップス」や「ここ一番での自滅」を消し去るための、最強の武器です。
最初は距離感に戸惑うかもしれません。
周りから「変わった握り方だね」と言われるかもしれません。
でも、そんなことは些細な問題です。
1mのパットを自信を持って沈められる快感を知れば、もう元のグリップには戻れなくなるはずです。
さあ、まずは今すぐパターを持って、「ペンシル型」で構えてみてください。
その右手の軽さこそが、新しいパッティングの世界への入り口です。

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